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「失われた30年検証研究会」記者会見開催
2024年11月19日
主催者挨拶
2024年11月1日
本研究会は2022年6月の発足以来、日本の競争力低下の原因を探り、その再生への道筋を見出すべく活動を続けてきました。本報告書はその2年余りにわたる調査・研究・議論の集大成であり、同時に日本の未来に向けた新たな出発点でもあります。
日本社会はいま、かつてない課題に直面しています。長年の経済停滞が引き起こした政治不信やリーダーシップの欠如、相次ぐ不祥事や国際社会での存在感の低下、さらには少子高齢化や貧困問題が複雑に絡み合い、国家としての将来展望が見えにくくなっています。また、CO2削減への圧力が増す中で頻発する自然災害、新型コロナウイルスがもたらした社会構造の変化も含め、多くの課題に立ち向かう必要に迫られています。
1990年代初頭のバブル経済崩壊以降、日本経済は長期的な停滞に陥りました。1970年代後半から「ジャパン・アズ・ナンバーワン」と称賛された日本の経済力と国際的影響力は徐々に衰退し、近年では「失われた30年」という言葉が広く使われるようになりました。この30年間、日本は経済成長率の低迷や国際競争力の相対的低下という問題に直面しながらも、他の先進国に遅れをとりつつ、着実に変化を遂げてきた一面も持っています。
しかし、この期間を振り返ると、現在の日本社会が急速なグローバル化と多様化の波に十分対応できていなかったという側面が浮かび上がります。日本が失ったとされる30年の間、米国ではGoogle、Apple、Facebook、Amazon、MicrosoftといったGAFAM企業に代表されるような、革新性と多様性を重視した企業が台頭し、世界の経済・社会を牽引する存在へと成長しました。こうした違いの背景には、外部環境の変化を読み取り、異なる文化や価値観をもつ人々と協働し、共通の倫理的価値を見出す能力が不足していたことがあると考えられます。
そのため、今後の日本社会において、異文化や多様なステークホルダーと信頼関係を築き、合意形成を行いながら共通の目標に向かって進む能力が求められています。このプロセスを支えるためには、「パブリックリレーションズ」の知識と技術が不可欠です。これは、単に宣伝や広報活動を指すだけではなく、異なる背景をもつ多様なステークホルダーとのリレーションシップ・マネジメントの手法であり、社会全体が直面する課題に対して、持続的かつ協働的な解決策を見出すための枠組みを提供します。
パブリックリレーションズは、20世紀初頭に米国で誕生し、社会に深く浸透してきました。企業経営の領域では、財務やマーケティングと並ぶ重要な経営要素とされ、倫理的価値に基づく透明なコミュニケーションと信頼関係の構築を通じて、組織の目標達成を支援する役割を担っています。また、パブリックリレーションズは単なるビジネススキルにとどまらず、企業と社会の相互理解を促進し、社会的課題に対する解決策を模索する力とも言えます。
一方で、日本ではこのパブリックリレーションズに対する理解や社会的認知が十分に進んでいないのが現状です。学問的研究や実践的教育も限られており、その重要性を日本社会の成長や成熟に役立てる基盤が欠けています。これを補うためには、パブリックリレーションズの専門的知識を教育システムに組み込み、幅広い世代が異なる価値観や視点を受け入れる力を身につけることが求められます。社会の各セクターと市民が協力し、持続可能な未来に向けた合意形成が図られるべきです。
本研究会の目的は、この30年間を多角的かつ客観的に検証し、その教訓を明らかにすることにあります。これらを踏まえ、今後の30年、さらにはその先の未来に向けた日本再生のシナリオを提示することにあります。経済・金融政策、産業構造の変化、労働市場、教育・人材育成、科学技術・イノベーション、社会保障、地方創生、外交・安全保障、環境・エネルギー政策、ジェンダー平等など幅広い分野にわたる分析を行い、その成果と課題を浮き彫りにしています。
報告書の提言には、少子化対策の抜本的強化、デジタルトランスフォーメーションの促進、教育改革の深化、多様性推進など、多岐にわたる改革案が含まれています。これらの実現には、政府のみならず、企業、教育機関、市民社会が一丸となって取り組むことが重要です。そして、この過程で重要な役割を果たすのが「パブリックリレーションズ」であり、社会各層の意識を高め、信頼関係を構築し、国民的な合意形成を通じて日本再生に向けた行動を促すことが期待されています。
「失われた30年」は日本にとって大きな試練の時代でしたが、これを貴重な学びの機会として捉え直す必要があります。本報告書を出発点とし、パブリックリレーションズの力を活用することで、各セクターが主体的に行動を起こし、さらに議論を深めていくことが重要です。日本社会の真面目で勤勉な特性は、未だ変わることがありません。高い資質と能力を持つ日本人が、次の30年に向けて、新たな日本の姿を創造するための挑戦に立ち上がることを強く願っています。
2024年11月19日
失われた30年検証研究会
座長 井之上 喬
<資料1>「失われた30年検証研究会」について
2021年11月に発足いたしました一般社団法人 日本パブリックリレーションズ学会は「失われた30年検証研究会」を2022年6月に設置いたしました。運営体制として、NHKや民放、大手新聞社などマスメディア各社から、政治、経済、社会、国際、科学技術など様々な分野をカバーする論説委員、編集委員、デスクら20人余りで組織し、各分野の政策責任者、学者、専門家などを講演者として招き、日本の競争力がこの30年間になぜ衰えてしまったのか、どうすれば再び世界の主役となれるのか検証してきました。
運営体制は下記の通りです。
座長
- 井之上 喬 日本パブリックリレーションズ学会代表理事・会長、京大大学院特命教授
チーフリサーチャー
- 関口 和一 MM総研代表取締役社長、元日経新聞編集委員および論説委員
シニアリサーチャー
- 藤田 幸久 国際IC日本協会会長、元財務副大臣
リサーチャー(50音順)
- 大嶋 辰男 朝日新聞業務連携支援センター
- 大野 邦久 京都大学大学院修了
- 大和田 克 金融データソリューションズ
- 金 武貴 京都大学経営管理大学院博士課程、ビジネス書作家
- 林 永健 日本パブリックリレーションズ研究所(事務局長兼任)
- 平井 康嗣 編集者
研究会メンバー
- 長谷川 聖治 元読売新聞、日本テレビ文化センター社長(科学、バイオ、3/11)
- 吉田 典之 読売新聞編集委員(環境問題など)
- 伊藤 俊行 読売新聞編集委員、元政治部長(日本政治、自民党、外務省、官邸)
- 榊原 智子 元読売新聞専門委員、恵泉女学院大客員教授(少子高齢化、社会保障)
- 山田 厚史 元朝日新聞編集委員(経済、金融)
- 木村 恭子 日本経済新聞編集委員(政治経済、エドテック、女性キャリア)
- 三河 主門 フリージャーナリスト、元日経MJ・日経産業新聞デスク
- 明珍 美紀 毎日新聞編集編成局兼企画編集室(ジェンダー、環境問題など)
- 高木 徹 NHK国際放送局チーフプロデューサー(国際メディア、国際報道)
- 山本 恵子 元NHK名古屋コンテンツセンター副部長・解説委員(ジェンダー等)
- 清水 將裕 元NHK社会部副部長、元「おはよう日本」チーフプロデューサー等
- 守田 哲 TBS社会部記者(警視庁、池袋暴走事故など)
- 谷本 有香 フォーブスWeb編集長(金融、経済など)
- 野中 大樹 東洋経済新報社
- 松崎 隆司 経済ジャーナリスト、日本ペンクラブ言論表現委員会委員
- 杉本 りうこ 元週刊東洋経済副編集長、元ダイヤモンド副編集長
オブザーバー
- 板東 和正 産経新聞パリ支局長
- 笹谷 秀光 千葉商科大学客員教授、元農林水産省大臣官房審議官
- 大島 愼子 一般社団法人日本パブリックリレーションズ学会理事
<資料2>講演会登壇者について
政治、経済、国際、文化、教育など各分野の政策責任者、学者、専門家など、42名を講演者として招き、日本の競争力がこの30年間になぜ衰えてしまったのか、どうすれば再び世界の主役となれるのか検証を重ねてきました。
ご講演いただいた方々は下記の通りです(以下講演順:役職は当時のもの)。
- 伊藤 元重 氏 経済:東京大学名誉教授、元総合研究開発機構理事長
- 藻谷 浩介 氏 社会:日本総合研究所調査部主席研究員
- 寺脇 研 氏 教育:京都芸術大学教授、元文部科学省大臣官房審議官
- 関口 和一 氏 IT:MM総研代表取締役所長、元日経新聞編集委員および論説委員
- 中曾 宏 氏 財政金融:大和総研理事長、元日本銀行副総裁
- 青山 俊樹 氏 国交:元国土交通省事務次官
- マーティン・ファクラー 氏 メディア:元ニューヨークタイムス東京支局長
- 林 伴子 氏 男女共同参画:内閣府政策統括官、元内閣府男女共同参画局長
- 伊藤 公雄 氏 ジェンダー:京都産業大学客員教授、京都大学名誉教授
- パラノビチ・ノルバート 氏 少子化:駐日ハンガリー大使
- 黒川 清 氏 教育:日本医療政策機構代表理事、元日本学術会議会長
- 金子 勝 氏 財政:淑徳大学大学院客員教授、慶應義塾大学名誉教授
- 奥 正親 氏 少子化:岡山県奈義町町長
- 松江 秀夫 氏 経営:デロイトトーマツ執行役員
- 小宮山 宏 氏 科学技術:三菱総合研究所理事長、元東大総長
- 小川 和久 氏 軍事:軍事アナリスト、静岡県立大学特任教授
- 藤田 幸久 氏 政治:国際IC日本協会会長、元財務副大臣
- 藤崎 一郎 氏 外交:日米協会会長、元駐米特命全権大使
- 山下 一仁 氏 農業:キャノングローバル戦略研究所主幹
- 鈴木 宣弘 氏 農業:東京大学教授
- 神津 里季生 氏 労働:全労災協会理事長、元連合会長
- 宮内 義彦 氏 経営:オリックス・シニア・チェアマン
- 千本 倖生 氏 経営:株式会社レノバ名誉会長、元KDDI共同創業者
- アレン・マイナー 氏 経営:サンブリッジグループCEO
- 東郷 和彦 氏 外交:静岡県立大学客員教授、元オランダ駐箚特命全権大使
- 伊藤 穣一 氏 IT:千葉工業大学長
- 孫崎 享 氏 外交:東アジア共同体研究所所長、元外務省国際情報局長
- 辻 哲夫 氏 厚労:東京大学未来ビジョン研究センター客員研究員、元厚生労働事務次官
- 白川 方明 氏 金融財政:青山学院大学国際政治経済学部特任教授、元日本銀行総裁
- 中野 剛志 氏 経産:元京都大学准教授
- 長 有紀枝 氏 難民:立教大学教授、難民を助ける会会長
- 佐々木 毅 氏 政治:令和臨調共同代表、元東京大学総長
- 落合 陽一 氏 起業:メディアアーティスト、筑波大学准教授
- 施 光恒 氏 政治:九州大学大学院教授
- 福原 秀己 氏 文化:内閣府クールジャパン官民連携PFアドバイザリーボード
- 小堀 眞裕 氏 政治:立命館大学法学部教授
- 下村 健一 氏 メディア:白鴎大学特任教授、元内閣審議官
- 今村 聡 氏 医療:今村医院院長、元日本医師会副会長
- 野田 佳彦 氏 政治:衆議院議員、元内閣総理大臣
- 川端 清隆 氏 国連:九州大学大学院非常勤講師、元国連本部政務官
- 柳澤 協二 氏 防衛:国際地政学研究所理事長、元内閣官房副長官補
- 石破 茂 氏 政治:衆議院議員、元自民党幹事長